ブックタイトルメカトロニクス11月号2020年

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概要

メカトロニクス11月号2020年

48 MECHATRONICS 2020.11特別企画「メカトロニクス」のルーツを探る~「メカトロニクス」という言葉の由来~写真1 メカトロニクス(Gicho Business Communications) 本誌の日本語名は「メカトロニクス」で、英語名は「Mechatronics Design News」となっている。生産財業界の最新技術や企業動向を紹介している総合情報誌で、創刊は1976年2月15日である(写真1)。古い歴史のある情報誌である。 「メカトロニクス」という名称を世界に広めたのは、本誌を含めた各社関連媒体の効果が大きいと考えられるので、その背景とともに、この情報誌の題名の由来についてのルーツを探ってみた。 「メカトロニクス」という言葉は、実は外来語ではなく、日本の産業界に由来するので、まずそれに関連する企業の生い立ちから紹介したい。 黒田藩士徳永家の四男として、1849年(嘉永2年)福岡で生まれた敬一郎は、幼名を藤四郎といった。藤四郎は安川家の養子となり、17歳のとき名を敬一郎と改め家督を相続した。 明治維新後、京都、静岡、東京などに国内留学して欧米の新知識と思想を学んだ安川敬一郎は、1874 年(明治7 年)に兄の幾島徳(めぐむ)が突然の戦死となったため、止む無く慶応義塾を中途退学して兄の代わりに地場産業である炭坑業に専念することになる。 石炭の直接販売に力を注ぐ傍ら、採炭の面でも新しい技術を取り入れながら、年とともに鉱区を広げてゆき、1896 年(明治29 年)に“ 明治炭坑株式会社”を設立した。 敬一郎の事業展開は、炭坑業のみにとどまらず、石炭の消費の拡大が見込める紡績業に着目し、1908 年(明治41 年)“ 明治紡績合資会社”を設立した。 また、日中合弁事業として製鋼所の建設にも携わり、1917年(大正6 年)に“九州製鋼株式会社”を設立した。この九州製鋼株式会社は、後に日本製鐵株式会社に合併された。 この他にも敬一郎は、鉄道、銀行経営にも事業を広げている。また、敬一郎は人材育成にも力を注ぎ、技術者養成の専門学校として“明治専門学校”を1909 年(明治42年)に開校した。 その後、明治専門学校は官立に移行し、現在は九州工業大学として多くの技術者を輩出している。 そして1915年(大正4年)、株式会社安川電機(以下、安川電機)の前身である“ 合資会社安川電機製作所”が設立され、安川敬一郎の五男である安川第五郎が社長となった。 第五郎は東京帝国大学電気工学科を卒業後、久原鉱業所日立製作所(後の株式会社日立製作所)へ入社し、1年間勤めた後、アメリカのウエスチングハウス社でさらに1年間の実習生活を送り、帰国後電機製造事業を興した。1)そして安川電機として発展していった(写真2)。 さて、本題の「メカトロニクス」の由来について紹介しょう。この「メカトロニクス」は、安川電機の技術者であった森 徹郎によって作られた言葉で、機械装置(メカニズム:mechanism)と電子工学(エレクトロニクス:electronics)との合成語である。 「メカトロニクス」は、英語のように思われがちであるが“和製英語”である。顧客の機械装置と安川電機の電機製品を融合し、より高い機能を発揮できるようにとの考えから、世界に先駆けて「メカトロニクス」という言葉を1969年に提唱したのであった。これが意外と知られていない。 機械の制御に電子技術を応用し、高性能化を図るメカトロニクス技術は、今日では様々な産業の自動化/効率化/省力化などに役立つようになった。 安川電機は、メカニズム(Mechanism)とエレクトロニクス(Electronics)の融合を目指して「メカトロニクス(Mecha-tronics)」という概念を創出し、1972年1月に商標登録を行っている。現在は安川電機が商標権を放棄し、「メカトロニクス」という言葉が一般化して、当たり前のように使われている。 一般化した言葉で有名な例としてソニーが商品化したヘッドホンステレオの「ウォークマン」がある。ソニーの商品名がいつの間にか使われるようになって一般化した例である。 日本は、なにかと略して使用するのが多いようで、「メカトロニクス」を短くした「メカトロ」という言葉も時には使われる。 さらに最近の「メカトロニクス」では、機械工学、電子工学とともに情報工学(informatics)を含めて、より範疇が拡がって扱われるようになった。 細分化してみると機械工学としては、材料力学、機械力学、熱力学、流体力学、設計工学、機構学,制御工学、システム工学、ロボット工学などが関連している。 電子工学としては、電気工学、電磁気学、無線工学、通信工学、計測工学、半導体工学などが関連している。さらに情報工学においては、ソフトウエア工学、計算機工学、ネットワーク工学などが関連している。このように幅広い分野の知見が活かされてメカトロニクス領域が構成されていることになる。 安川電機は、早くから「メカニズム」と「エレクトロニクス」の有機的な結合をねらった技術開発を推し進め、モートマン、サーボモータ、NC 装置、メモコン-SC などをメカトロ製品として世に送り出していった。 オイルショックを抜け出した1975年代前半の我が国産業界では、エレクトロニクスによる産業革命の到来か、といわれるほどエレクトロニクス化が進展第1号第300 号第500 号