ブックタイトルメカトロニクス7月号2021年

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概要

メカトロニクス7月号2021年

42 MECHATRONICS 2021.7第37回 <話題商品を作った電気・電子機器メーカーのルーツ(その1)> モノづくりの企業が、企業を創業するには何かしらの製品作りから端を発し、それが市場で受け入れられて当時の話題商品となって事業として成功した形で進展する。そして徐々に業態を増やしていって発展して大企業へとなって100年以上にもなる企業もある。今回は、代表的な電気・電子機器メーカーの生い立ちを鳥瞰しながらその後の発展状況について紹介する。1. 電気・電子機器メーカーのルーツ探索 電気・電子機器メーカーの系統を大別すると“総合電機系メーカー”、“総合家電系メーカー”、“IT系メーカー”、“音響映像系メーカー”、“光学電子系メーカー”、“ 精密系メーカー”などに分類できるのではないかと思い、このような分野ごとの各企業のルーツを探るとともに、各企業が手掛けた話題商品などについて紹介することにする。先ず、最初に“総合電機メーカー”から紹介する。1-1. 総合電機メーカー 元々、重電系からビジネスを開始し、手掛ける製品群を徐々に増やしていき、対象分野は原子力発電など大規模なプラント建設、鉄道などの社会インフラに関するものから家電などの個人向けの製品まで扱っており、そのため総合電機メーカーと言われるようになった。では、具体的な代表企業を創業の早い企業から順番に紹介する。1-1-1. ジーメンス 1847 年12月12日に、ヴェルナー・フォン・ジーメンス(Werner von Siemens)によってベルリンにてジーメンス・ウント・ハルスケ(Siemens &Halske AG)の会社名で電信機の製造会社として創業を開始した(表1)。後にジーメンス・ハルスケ電車会社に発展し、世界で最初の電車を製造し、1881年に営業運転を開始したことでも知られる。1日の運転回数は10 回であった。この世界初の電気鉄道車両はベルリンのドイツ技術博物館に保存されている(写真1)。 Siemensは、インターシティエクスプレス(ICE)という高速列車の車両を生産しており、現在、鉄道車両では約2 割の世界シェアを誇る(写真2)。 電信、電車、電子機器の製造会社から発展し、その後、交通・運輸、生産設備、情報通信、家電製品、防衛等の分野で製造するとともに、最近ではシステム・ソリューション事業も手掛け、幅広い事業展開を実施している会社である。日本では補聴器やMRI 装置等の医療機器で知られる。特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 青木 正光 社名のドイツ語標準発音をカタカナ表記すれば「ジーメンス」となる。日本法人は「シーメンス」の表記を使用している。 1923 年、ジーメンスは古河電気工業と発電機と電動機を日本で国産化するため合弁会社として富士電機製造株式会社(現・富士電機株式会社)を設立した。 社名の富士の「富」は古河グループの「ふ」、「士」はジーメンスの「じ」に由来する。1-1-2. 東芝 東芝の初期のルーツは2つの流れがある。1875年に田中久重が東京都中央区銀座にて田中製作所を創業したことに始まり、結構、古い時代まで遡る(表2)。創立者である田中久重(1799-1881年)は、“からくり人形”や“万年自鳴鐘”などを発明し、若い頃からその名が広く知られていた(写真3、4)。1) 当時、日本国内には電気はほとんど普及していなかったが、田中久重は電気を作り出すための“ 発電機”を開発することで田中製作所の経営を軌道に乗せることが出来た。 田中製造所は1893年に芝浦製作所と名を改め、1904年には株式会社芝浦製作所を創立した。日本の重電メーカーの源流の1つとなった。 もう1つは、1890 年に藤岡市助、三吉正一が東京・京橋に最初の白熱灯製造会社として“ 白熱舎”を創設し、わが国初の炭素電球を製造した。後に、さまざまなエレクトロニクス製品を開発し、1899 年に“ 東京電気”と改名された。 両社とも創業地が東京である関係上、東芝は東京発の電機メーカーとして発展した。東芝が大企業として発展する転機は、1939 年に“ 芝浦製作所”と“東京電気”が合併して「東京芝浦電気(後に東芝と改称)」を発足させたことである。 発電機などの重電機の製造に強みがあった“ 芝浦製作所”(1875 年創業)と白熱電球などの家電に強みがあった“ 東京電気”(1890 年創業)が合併したことで、1939年以後の東芝は“総合電機メーカー”として電気業界の歴史を牽引する存在となった。 そして、近年では1989年に小型・軽量のノートパソコン『DynaBook SS-001』を商品化してヒット商品となる。元祖ノートパソコンでモバイルパソコンの先駆けとなったものである(写真5)。1-1-3. ゼネラルエレクトリック トーマス・エジソンと言えば発明家として広く知られている。エジソンは2,332 件もの特許を出願する程、様々な技術を開発した。時代を変えた「魔術師」との異名もささやかれた程だ(写真6)。写真5 ノートパソコンの元祖(DynaBook SS001)会社名東芝創 立1875 年(田中製作所の創立年に由来)本社所在地東京都港区芝浦売上高3.1 兆円(2020 年)従業員数12.9 万人(2020 年)備 考コーポレート・ステートメント “Leading Innovation”表2 東芝の概要写真2 高速列車ICE会社名Siemens AG創 業1847 年本社所在地ドイツ・バイエルン州ミュンヘン売上高571.39億ユーロ(7.5 兆円)(2020 年)従業員数29.3 万人(2020年)表1 ジーメンスの概要写真1 世界初の電気鉄道車両(1881年)と時刻表写真3 からくり人形写真4 万年自鳴鐘